設備の相談を受けていると、最初は「この作業を機械化したい」というシンプルな話から始まることが多いです。
こんにちは。
生産現場での「手間」と「モヤモヤ」を減らす人、けたろーです。
大阪・柏原(かしわら)市で、機械づくりと社長や現場の話を聴くことの両方で、生産現場をちょっとラクな環境にしていくサポートをしてます。 でも、本当につくっていきたいのは、余白(ゆとり)のある現場… だったりします。
さて…
「対応できます」には、機械側の代償がある
話を進めていくうちに、だいたい、
「このサイズも流したい」
「できれば、こちらの製品にも使いたい」
「将来はこの工程も一緒にしたい」
というふうに、条件が広がっていきます。
これは、お客さんが何をしたいかわかっていない、という話ではなく、むしろ、やりたいことはちゃんと把握されていることのほうが多いという印象です。
問題は、それぞれの希望に対して、優先順位がついていないまま話が進んでしまうことなんですよね。 あと、「どうせ、やるなら…」という欲求です。
でも…。 「これも、あれも」を全部そのまま一台の機械に載せようとすると、機構が増え、調整範囲が広がり、結果として設備そのものが大きく、複雑で、高価なものになっていきます。
「このサイズにも対応できますか?」
と聞かれたとき、機械的に対応する方法自体は、たいてい存在します。 考えられなくはない… という感じです。
機械を考える側とすれば、正直なところ、なるべく要望通り、対応できる格好にしてあげたい…。 とは思うのですけど、そこには『許容』というのがあります。 つまり、「なんでもかんでも詰め込む」というのが難しい場合もあるということです。 対応範囲を広げるためには、たとえば、
- ガイド幅を広く調整できる構造にする
- ストロークを長くする
- 治具交換式にする
- センサー位置を可変にする
- 高さ調整機構を設ける
- 複数条件を制御側へ登録する …など
といったことが必要になってきます。

その結果として、機械が大きくなったり、構造が少し複雑になったり、ということもでてきます。 もちろん、それは金額にも影響します。
調整箇所が増えれば、現場側の段取りも増えやすくなります。 もっとも、そうならないように最善の考えで設計をするのですけど、それでも、対応範囲を広げるということには、必ず何らかのトレードオフがあるということは否めないです。
もちろん、条件によって程度は変わりますし、「必ず高くなる」「必ず大きくなる」と言い切れるものではありません。
範囲が広すぎると、どれにも中途半端になることもある

小さい製品から大きい製品まで一台で扱いたい。薄い製品と厚い製品を同じ設備で扱いたい。形状がまったく違う製品まで共用したい…。
こういった要望自体は、決して珍しいものではありませんし、過去にも対応したことがあります。
ただ、対応範囲が大きく離れているほど、一つの機構で無理なく対応することが難しくなる場合が多いです。 それは、最小の製品に合わせた設計と、最大の製品に合わせた設計では、機械的に求められる条件そのものが違ってくることがあるからです。
少し加えると、最大と最小で各1品種づつしかない。 という場合なら、大きいサイズに合わせて機械構成を考え、小さいものはアタッチなどで対応するという方法が考えられます。 このパターンは、比較的楽です。
ややこしくなるのは、最大と最小の間で、サイズ構成が複数あるという場合です。 中間のサイズ群に対してどうするか? 単純にアタッチメントを考えるだけでは済まない場合があります。
という点を考えると、「幅広く対応できる=使い勝手がよく優れた機械」ではないということです。
ある程度範囲を絞って、似通った範囲へ特化させることで、構造がシンプルになり、調整が少なくなり、結果として現場で扱いやすくなることがあります。
一台で全部が、本当に一番得なのか
複数の設備を入れるより、一台ですべてできる方が、安いし、場所も取らないし、管理もしやすい…。
そう感じられるのは自然なことだと思います。 ただ、実際には必ずしもそうとは限らないんです。
そもそもお客さんが本当に欲しいのは機械そのものではなく、その先にある安心して回る現場なのだと思ってます。 (この話は「ほんとうは、お客様はうちの機械なんて欲しくない…」でも詳しく触れています)。
一台ですべてを対応しようとして、特殊な機構や大きな調整範囲を持たせることで、かえって設備全体が大きく、高価になってしまう場合もあります。 そこでボクらがお勧めするのは、たとえばこんな方法です。
- 使用頻度の高い8割程度を一台で対応する
- 特殊な2割くらいを治具交換にする
- 特殊品だけ別工程にする
- 既存設備をそのまま活かす
- 一部分だけ人作業として残す
機械を一台にまとめることと、設備全体をシンプルにすることは、実は同じではないんですよね。

…あと、誤解がないように少し加えておきますが、機械を考える上では、極力シンプルで、使い勝手がいい方法を考えます。 対応するにも、限界があるということを理解してもらえると嬉しいです。
予算が限られているなら、先に「何が必要か」を整理する

やりたいことの範囲に対して、予算が十分でない、ということもよくあります。 重要なのは、「やりたいことへの優先順位」です。 それをまず先に整理することが大事です。 例えば、
- 絶対に必要なもの。
- これができなければ、設備を導入する意味がなくなるもの。
- できれば欲しいもの。
- あれば便利だけど、なくても目的は達成できるもの。
- 使用頻度が低いもの。
- 年に数回、月に数回しか使わない条件。
- 将来必要になるかもしれないもの。
- 今すぐ搭載する必要があるのか、
- 後から対応できればいいのか。
- 別の方法でも対応できるもの。
- 人、既存設備、別工程、簡単な治具… など。
こんな項目を整理していくと、「何に重点的に予算を使うべきか」が見えてきます。
将来への対応は、全部載せることではない
将来、別サイズを流すかもしれない。別製品を扱うかもしれない。工程が追加されるかもしれない… だからといって、将来必要になるかもしれない機能を、最初からすべて設備へ載せる必要はありません。
後でガイドを交換できる構造にしておく、センサーを追加できるスペースだけ確保しておく、といったように、必要になったときに変更しやすい余白だけ残しておく方法もあります。
将来対応というのは、今、全部つけることではないです。
良い機械は、何でもできる機械ではない
ボクらが考える良い設備というのは、できる機能が多い機械のことではありません。
その現場にとって必要なことを、無理のない構造で、扱いやすく、必要以上に大きくせず、必要以上に複雑にせず、現実的な予算の中で実現できる設備。
そのためには、仕様を決める段階で、「何ができる機械をつくるか」ではなく、「この一台に、どこまでやらせるか」を決めることが大事です。
お客さんから出てくる「あれもしたい」「これもしたい」という希望を、一度そのまま広げて聞いたうえで、本当に必要なのは何か、使用頻度はどれくらいか、一台に載せる意味があるのか、後から対応できれば十分ではないか。
そういうことを一緒に整理していく。
仕様がまとまっていないから相談する、というだけでなく、仕様を整理するところにも、機械屋の役割があるとボクは思っています。
よくある質問はこんな感じです。
まずは、希望をそのまま聞かせてください
「これもしたい」「あれもできれば」という段階でも、まったく構いません。
その希望を全部そのまま機械へ載せるのではなく、何が本当に必要なのか、どこまでを一台で対応するのが現実的なのか、後から追加するほうがいいものはないか。話を聞きながら、一緒に整理します。
仕様がまだ固まっていない、という段階からの相談の進め方については「機械化したいけど、どこに頼めばいいかわからない。それでも相談できます」でも紹介していますので、あわせて読んでもらえたらと思います。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます!
まず、話してみませんか?
現場のことで「なんとなくおかしい」
と感じていることがあれば、まず、話してみませんか?
うまくまとまっていなくても大丈夫です。
※ 無理な営業や契約を前提としたご案内は行っていません。
☆ あわせて、読んでみてください。
